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花博自然環境助成事業

平成29年度助成事業 成果概要の報告

団体名(所在地) 京都大学・神戸大学 林冠生態学研究チーム〔京都府〕
事業名 芦生研究林内保存木の着生植物群集の保全生物学的研究
事業の実施場所 京都大学フィールド科学教育研究センター 森林ステーション 芦生研究林
事業の実施期間 今回計画:平成29年4月~平成30年3月
事業の概要 芦生研究林内に保存木として保護されている巨木には、多くの着生植物(樹上で生育する植物)が生育している。巨木の生物学的な保全意義を再評価するために、木登り技術を用いて、地上からは確認できない巨木の梢端や樹冠の隅々まで、着生植物群集のインベントリ調査を行う。
成果の要約

■多様な着生植物群集
芦生研究林の保存木の一つであるカツラの樹上には、木本28種、草本5種、シダ類6種の計39種の維管束植物が生育していることが明らかとなった。そのうちの6種は京都府レッドデータブック2015に含まれる希少な種であった。保存木のカツラ梢端から直接メジャーをおろして測定したところ樹高が37.8mであった。樹形を測量したところ、10m付近は周長の太い枝が横に張り出したり、複数の幹が重なったりして林冠土壌が溜まりやすくなっており、また20m以上からは枝の密度が高くなっていて、特にこうした位置に多様な着生植物が生育していた。

■樹上特有の環境条件
樹上に堆積する有機物層(林冠土壌)を調べた結果、分解者の群集組成は地上とは異なり、樹上においても植物体の養分の生成速度は維持されていることが明らかとなった。着生植物は水利用効率を高めるなどして、樹上の環境に順応して生育している様子がうかがえた。
芦生の森に長く生存してきた巨木に成立する着生植物群集の多様性について明らかにすることで、日常には知りえない自然界に存在する共生の一端を垣間見ることができた。本事業についてはNHK「まちけん参上!」、日本テレビ「所さんの目がテン」の番組において紹介された。また、第65回日本生態学会大会、The 8th EAFES International Congressにてポスター発表を予定している。本事業で得られた成果を目にした人たちが、そこにしか存在しえない貴重な自然に対する意識を感じ、巨木の保全意義について見つめ直すきっかけとなれば幸いである。

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