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花博自然環境助成事業

令和4年度助成事業 成果概要の報告

団体名(所在地) モンゴル森林再生促進研究会〔滋賀県〕
事業名 「倒木遮蔽更新」仮説を応用した再生促進技術の開発
事業の実施場所 モンゴル国フブスグル県スブスグル国立公園内の山火事跡再生困難地(アゼクツアル川周辺など)および滋賀県立琵琶湖博物館(滋賀県草津市)
事業の実施期間 今回計画 :令和4年4月~令和5年2月 (助成対象期間)
事業の概要 降水量が少ないため、山火事後の再生が困難なモンゴル北部で、森林観察で着想を得た「倒木遮蔽更新」仮説を応用した森林再生促進技術の開発を行い、その成果を現地の人々に共有してもらうために研究調査、発表、技術研修、展示、論文化を行う。
成果の要約

1.令和4年6月に山火事跡再生実験地フルスレーにて再生促進方法の技術研修会、現地説明会を行い、国立公園事務所の署長さん以下担当者を含む希望者14名に技術伝達を行った。また、ハトガルに戻ったあと、国立公園事務所で通訳さんを介して研究セミナーを行ない、倒木遮蔽更新仮説の説明、火事跡再生困難地でのこれまでの植樹、種蒔き実験や、各種観測した結果、マニュアルに即した倒木のセット方法、植樹、種蒔きの方法について説明し、質問に答えた。

2.6月、実験地から戻って、翌朝快晴となったので、ハトガル気象台圃場にて倒木陰の光条件(照度)の測定を早朝から夕方まで連続で行った。夏至にほぼ近い時期の6月23日の快晴時、倒木からの距離0,5,10,15,20cmに多色の光センサーを配置した測定装置を研究会で製作、東西方向に横たえた倒木の北側直角方向に設置し、同時に全天下と陰の明るさを2台の照度計でも測定して比較基準とした。倒木陰側の明るさの程度とその変化がどれぐらいあるかを調べた。

3.8月、前回コロナ禍のため渡航できず、やむを得ずリモートで行った2020年7月の実験(斜め板を用いて、倒木のない荒廃地への応用を考えたもの)の2年後の活着データの採取と実験地の設定状況の直接確認を行った。

4.8月30日、モンゴルウランバートルのモンゴル農業大学(MULS)で研究報告会を開き、学長を含む大学の植林関係者、森林研究者、学生などにこれまでの倒木遮蔽更新仮説についての研究紹介と「再生促進マニュアル」を通訳さんを介して、説明し、質問に答え、広く意見を聞く場を持った。

5.令和4年10月~12月 調査結果の分析とりまとめ。

令和5年1月~2月事業収支決算書、事業報告書のとりまとめと提出。

フブスグル国立公園の方々への現地説明と研究セミナーによって、またモンゴル農業大学の研究者の方々への研究報告会によって、かなり実感をもってこの方法の有効性が伝わった事は成果だった。

倒木陰の明るさの、日の出から日没までの時間変化は、以前観測した時と同様に南中を挟んで、二山が現れ、山の間は、倒木の陰で直射光がカットされるため、実生にとっては乾燥から守られた時間となっている事が判明した。倒木に近い方から0,5,10cmの順に、より明るくなった。

また観測していて気がついたのだが,午後になると晴天時の日射で水蒸気が上がって積雲がだんだん流れてくるが、興味深いことに太陽が顔を出している限りは全天下の明るさはそれ程落ちない。太陽が雲に隠れるととたんに1割から2割に落ちて、逆に倒木陰は散乱光が増えるためか、2、3倍以上明るくなる事が驚きだった。

斜め板を使った実験では、2年目で倒木(A-)、斜め板 (B-)、それぞれ1本ずつ枯れ、24本中、3本、4本となったが、枯れた原因を詳しく調べると、両方とも食害で2本ずつ枯れていることが判明し、食害を除いた活着率は両方とも90%越えで、今のところ、ほぼ効果に差がない結果となった。 (草地(C-)は16本枯れだった),

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