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花博自然環境助成事業

平成30年度助成事業 成果概要の報告

団体名(所在地) 横浜国立大学・天然林の多様性研究グループ〔神奈川県〕
事業名 樹木種の多様性と機能性を支えるメカニズムの解明
事業の実施場所 神奈川県横浜市保土ヶ谷区常盤台79-7 横浜国立大学環境情報研究院、北海道大学中川研究林(データのサンプリング)、 国立極地研究所(サンプリングしたデータの化学分析)
事業の実施期間 平成30年4月~平成31年1月
事業の概要 本研究は北海道北部の天然林を対象に、森林生態系が有する多種共存機構と生態系機能への帰結の双方を、野外データをもとにして、理論的に紐解くことを目指す。
成果の要約

予備調査として行っていた文献調査の結果については、総説論文として「植物群集における個体レベルでの局所的な多種共存機構」という表題で2019年1月に日本生態学会誌に投稿中である。
現時点での解析結果として、トドマツとミズナラでは大半の形質が樹高に依存して変化した。一方で、イタヤカエデ の形質は土壌環境に強く応答した。トドマツは若い個体は成熟個体と比べて耐陰性が高く、生育するほどに成長が早く光の要求性が高くなった。
イタヤカエデ は成長が遅く耐陰性が高い代わりに土壌含水率への応答性が高かった。ミズナラは成長が早く光の要求性も高い。よって、優占する3種においては、明確に資源獲得戦略に差が見られた。
また、樹木の混み合い度は他の要因と比べて形質への影響が弱かった。しかしながら、トドマツの材密度、ミズナラの葉面積、イタヤカエデの比葉面積は混み合い度の影響を強く受けた。
トドマツについては、陽葉と陰葉、葉のサンプリング高、樹木サイズなどに依存して形質の変化が見られた。一部の形質については、葉のサンプリング高に依存した形質変化の傾向が陽葉と陰葉で異なっていた。ただし、傾きの正負は陽葉と陰葉で一致していた。全体的に、葉の高さに依存した変化は陰葉よりも陽葉で顕著であった。
さらに、トドマツの種内競争が強く働くことで、他の樹種や非優占種の個体が生育するのに必要なニッチが残されている可能性があり、それについては現在も解析を継続して行っている。
一連の調査と分析を通して得られたデータを用いて、冬季から解析と考察、論文作成の準備に着手している。
とりわけトドマツの種内・個体内における形質の多様性に関する解析結果を、2019年3月に実施される第66回日本生態学会神戸大会において発表予定である。

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