講演とパネルディスカッション 主催者である日中韓それぞれの関連学会からの挨拶の後、横張真氏による「Restoring Urban Environment by Greeneries」と題した基調講演が行われ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおけるマラソンコースの熱環境の改善や、気候変動時代の生物多様性を考える際のNative Speciesのレファレンスのあり方について議論が提起された。 研究者からのプレゼンテーションとしては、木下剛氏から生存・生業・生活を支えるためのインフラとしてのランドスケープの役割について、海外事例も交えつつ報告がなされた。王向栄氏は中国都市の自然環境に関わるデザイン実践とそれを支える戦略、金南椿氏はソウルにおける生物多様性のためのプランニングの実践例を報告した。 続いて学生コンペティションの結果発表と総評が三谷徹審査委員長よりなされ、審査員でもある日中韓それぞれの実務者(山田順之氏、李玉紅氏、李由美氏)による話題提供とパネルディスカッションが開催された。パネルディスカッションは限られた時間であったものの、「都市インフラのランドスケープ」を実践現場で展開していく際の課題と解決策いう観点から、日中韓の共通点について議論が活発に行われた。 本シンポジウムの開催にあたっては、学生コンペティションの審査や調査研究発表会と内容や登壇者が連動していたことにより、参加した多くの学生や若手研究者・実務者たちにとっても、講演や議論の内容がより身近に感じられたように思う。「都市インフラとしてのランドスケープ」を現実のものとし、地球規模課題に解決策を提示していくことはパリ協定や2020年東京オリンピック・パラリンピック後の時代を担う今の若い世代にとって、より身近で切実な課題となっていくであろう。そこでは国内のランドスケープ分野の専門領域や考え方に固執せず、研究と実務の垣根や国境を超えて問題を議論し、解決に向けて取り組んでいく姿勢が求められる。この点において「都市インフラとしてのランドスケープ」いういままさに浮上しつつある課題を正面からとらえた本シンポジウムは、さまざまな垣根を越えた将来における協働の第一歩としての一定の役割を果たしたと言える。
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