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花博自然環境助成事業

平成26年度助成事業 成果概要の報告

団体名(所在地) 道北の湿原保全グループ〔北海道〕
代表者 会長 露崎 史朗
事業名 絶滅危惧種ナガバノモウセンゴケ保全に必要な環境解明
事業の実施場所 サロベツ湿原(北海道豊富町)
事業の実施期間 平成26年4月~平成26年12月
事業の概要 サロベツ湿原泥炭採掘跡地に絶滅危惧種ナガバノモウセンゴケ(以下ナガバ)の個体群が見つかった。日本でわずか3箇所しか自生地がない本種が個体群を維持するために必要な環境を明らかにし、その保全策を提案する。
成果の要約

播種1週間後から発芽が見られ、約1ヵ月後に発芽数はピークに達した。2種共にミズゴケマット上での発芽数が最も多く、湛水地と泥炭裸地でほぼ同程度であった。8月後半までは、ほとんどの実生が生存した。しかし、次の1ヶ月で、ミズゴケマット上の実生の生存数は減少し、モウセンゴケでより顕著であった。一方、湛水地や泥炭裸地では、2種共に8月と9月の生存数はほとんど変わらなかった(図1)。

各ハビタットの土壌水分含量は、泥炭裸地で他より低く、光合成有効放射量はミズゴケマットで顕著に低かった。これらの結果より、播種1年目においては、暗所、高水分のミズゴケ地で実生生存は高く、明所、高水分の湛水地、明所、低水分の泥炭裸地に比べミズゴケマットが定着適地といえること、越冬前の生存数はナガバのほうが多いことが明らかになった。今後、播種プロットにおいて翌夏の生存数にハビタット間でどのような違いが見られるかを、野外個体群追跡の結果と照らし合わせながら確認する必要がある。

ミズゴケの回復様式に関しては、撹乱を受けた後、撹乱強度が弱いほど早く被度を回復し、その後、伸長成長を増大させることが明らかとなった。撹乱強度が強い場合には、被度の回復は不良で、低木が優占する場合が確認された。ミズゴケの回復が良好な調査区と不良な調査区で、水位や水質の違いはほとんど見られず、上層優占種による光環境の違いが大きく影響していることが明らかとなった。

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図1:3ハビタットにおけるナガバ、モウセンゴケの発芽数、実生生存数の推移

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プロットの拡大図.ナガバの発芽が確る

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泥炭採掘跡地に自生するナガバ

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播種実験のために湿原内に設置されたプロット