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花博自然環境助成事業

平成26年度助成事業 成果概要の報告

団体名(所在地) 日光植物園生態学チーム〔栃木県〕
代表者 宮下 彩奈
事業名 ブナ林の維持・再生に係るブナ個体の生育条件の研究
事業の実施場所 福島県南会津郡只見町・要害山
事業の実施期間 平成26年4月1日~平成27年3月31日
事業の概要 ブナ天然林の維持・再生のためのブナ更新適地の解明:特に、ブナ樹木個体の生死や到達可能な樹高を決める要因となりうる積雪環境について、実際の雪の作用を解明し、現実のブナや高木種の成長・分布を説明することを目指す。
成果の要約

ブナの幹が雪から受ける影響や、実生の生存に対する光環境影響の詳細が明らかになり、豪雪地でのブナの成長過程に関する知見が得られた。

ブナの幹は、どのような斜面環境においても、細いうち(直径≤10cm)は降雪開始とともに変形し、一か月前後で個体としての最大の変形に達していた。とくに幹直径≤4cm頃までは地面に倒伏して過ごし、その後成長するにつれて「直立形態の維持」と「破壊の危険性の増大(変形が困難になることによる)」との兼ね合いが重要になってくる様子が伺えた。比較的雪の作用が小さいと考えられる場所では、雪中で立ったまま破壊の危険性が大きくなっている個体が観察され、直径10cm前後までには冬も直立形態を維持しうることが示唆された。また、直立木の幹の変形は積雪期間をとおして徐々に増加していくこと、幹直径30㎝程度まで成長すればほとんど雪の影響を受けないことが明らかになった。一方、雪の作用が大きいと考えられる場所では大きく湾曲した樹形の個体がみられ、冬には幹直径10cm前後でもほとんど変形なしに地面に倒伏していた。このような環境では、幹直径が増しても直立形態を維持できず、ブナは幹の成長と破壊を繰り返していると考えられる。

ブナ当年生実生の生存率は、ある一定の明るさを超えればいずれの場所でも生存率は5割以上(発芽後3シーズン終了時)と比較的大きな値を示した。この生存の閾値は、実生個体の炭素収支で説明できた。雪崩斜面では明るさの割に生存率が小さい場所が存在し、光環境以外の要因、例えば攪乱等が影響していると示唆された。

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