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花博自然環境助成事業

調査研究開発助成事業 成果概要の報告

団体名(所在地) NPO法人 山の自然学クラブ〔神奈川県〕
代表者 理事長 大蔵 喜福
事業名 中央アルプス高山植生の長期モニタリング
事業の実施場所 木曽駒ヶ岳および三ノ沢岳周辺
事業の実施期間 平成22年4月~平成23年3月
事業の概要 日本を代表する高山帯のひとつである木曽山脈(日本アルプス)において長期を見据えた植生調査を行う。調査は、高山植生モニタリングの世界的取り組みであるGloria の方法にならい、他山岳と比較可能な定量的基礎データを得る。
成果の要約

① 雪解け時期の年変化
各調査区で自動記録している気温および地温の季節変化から、雪解け時期を検討したところ、各サイトの雪解け時期は、この3年間ほぼ一定していた。

② 植物相
各調査方形区では4~25種出現し、合計69種記録された。もっとも種多様性が高かったのは、7月初旬まで雪が残る南東斜面だった。雪解け時期が遅いことから、植物の生育可能な時期は短いが、水分条件が良いことがうかがえる。ハクサンイチゲ、シナノキンバイ、チングルマ、ハクサンチドリといった湿った草原によく見られる植物が多く生育していた。
強風のため積雪量が少なく、雪解けが5月初旬と早い場所は、風衝地群落と呼ばれるような乾燥地に見られる草本が多かった。風衝地群落には、中央アルプス固有種で絶滅危惧種でもあるヒメウスユキソウやコケコゴメグサが見られ、この地域独自の群落が成立している場所であった。
雪解け時期が6月と中間の場所は、ハイマツ、ハクサンシャクナゲ、ガンコウランなど矮性低木が優先していた。なお、低木が優先する群落は種多様性が低い傾向があった。特にハイマツが優先すると、コケモモなど特定の種が現れ、似たような群落になる傾向があった。

③ 植生の年変化
調査区の年変化を比較するために、2つの群集間の類似度指数であるMorisita(1959)のCλ指数を算出した。2つの群集が全く同じ場合は約1、まったく異なる場合は0をとる。調査区の9 割は類似度0.9 以上で、この3 年は大きな変化が見られなかった。一方、ハイマツの出現頻度が増加している調査区があった。既往の研究で、ハイマツの年伸長量は3~6cmで前年の夏の気温と正の関係があることが報告されている(Takahashi 2003)。
今後も引き続き変化をモニタリングしていく予定である。

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