スキップして本文へ

花博自然環境助成事業

平成20年度助成事業 成果概要の報告

団体名(所在地) NPO 法人 大阪自然史センター〔大阪府/琵琶湖下流部の三川(桂川・宇治川・木津川)合流以下の淀川水系全域(猪名川水系を含む)および、大阪市立自然史博物館〕
事業名 淀川水系における水生・湿生植物の分布調査
事業の実施場所 琵琶湖下流部の三川(桂川・宇治川・木津川)合流以下の淀川水系全域(猪名川水系を含む)および、大阪市立自然史博物館
事業の実施期間 平成20年4月~平成21年3月
事業の概要 近畿地方の主要水系である淀川水系は、外来生物の侵入や開発により、著しく環境が変化している。本事業では、水生・湿生植物に注目し、市民と共に現地踏査と標本資料の調査を実施し、分布状況と変遷を明らかにする。
成果の要約

[現地調査]

三川(木津川・宇治川・桂川)合流以下の淀川水系の河川、水路、水田、ため池に生育する水生植物(全ての沈水性・浮葉性水草、一部の抽水・浮遊性水草)、湿生植物(絶滅危惧種および特定外来生物)の分布を調査した。加えて、近年淀川下流部で大繁殖し、問題になっているボタンウキクサについて、生活史を明らかにするために毎月調査を行った。また、関連する研修や行事も実施した(実施5回)。
現地踏査の結果、アサザ、アズマツメクサ、オグラノフサモ、ミズキンバイ、トチカガミ、オオアカウキクサ等、大阪府内で近年分布が確認されていなかった、もしくは分布が稀であると考えられてきた種を確認することができた。また、これまで知られていた外来水草以外にも、アマゾントチカガミなどの観賞用導入された水生植物が多数流下していた。北米原産のナガバオモダカについては、これまで雌花のみをつけ、種子は作らないとされていたが、淀川水系では雄花をつける株が存在し、結実していることが明らかになった。
ボタンウキクサについては、定期調査の結果、淀川下流部では5月以降に確認されるようになり、6-7月以降に爆発的に増え始めること、ある程度の株サイズになるまで種子はほとんど実らないことが明らかになった。また、越冬が確認されている京都市木幡池(堂ノ川)では、温排水が越冬に関わっている可能性が示唆された。

[標本調査・整理]

分布調査を実施するにあたり、調査対象となる水生・湿生植物の植物体を可能な限り採集して、標本を作製した。結果、238種1110点(ただし、調査対象種以外のものを含む)、うち水生植物は82種785点、湿生植物は47種176点の標本を収集することができた。これを、標本台紙にマントし、大阪市立自然史博物館(OSA)に納めた。また、大阪市立自然史博物館標本庫において、過去に淀川水系で採集された水生・湿生植物の調査も進めた。

関連成果物(公表した論文、活動の写真等)

本事業の成果は最終的に2010年に大阪市立自然史博物館で実施予定である淀川に関する特別展に反映されるが、新しい知見は順次、学術雑誌等に順次報告している。2008年度は3報を発表した。
[論文・報告等]
志賀 隆,2008.水草通信 淀川下流のボタンウキクサ.日本植物分類学会ニュースレター29:22.
志賀 隆・武林周一郎,2008.淀川本流にてアサザを発見.Nature Study 54(12):164-165.
志賀 隆・武林周一郎,2009.越冬するボタンウキクサ‐京都市木幡池での観察‐.Nature Study 55(1):2-4,12.

20_05_01.jpg 20_05_02.jpg 20_05_03.jpg