スキップして本文へ

花博自然環境助成事業

平成20年度助成事業 成果概要の報告

団体名(所在地) 財団法人 花と緑の銀行〔富山県/富山県中央植物園、および昆明植物園を拠点とする中国雲南省〕
事業名 トウツバキ園芸品種の保全に関する日中共同研究
事業の実施場所 富山県中央植物園、および昆明植物園を拠点とする中国雲南省
事業の実施期間 平成20年4月~平成21年3月
事業の概要 富山県中央植物園において、組織培養技術によるトウツバキ増殖法の研究を行った。また中国雲南省大理州、楚雄市などにおいて、寺院等に植栽されたトウツバキ園芸品種の古木の調査や、自生地における植生調査を行なった。
成果の要約

[組織培養実験]

平成20年10~11月に昆明植物研究所の李景秀氏を、平成21年2~3月に魯元学氏を招聘し、ユチャ、ヤブツバキ、ユキツバキの種子を用い、トウツバキの試験管内接木用台木を得るための外植体および培養条件の検討を行った。様々な培養条件下で607本の試験管に置床し、生育経過を観察した結果、不定胚、カルス、球状構造物などの形成が見られた。これらを新しい培地に移植し、経過を観察中である。置床後15週間の時点では、WP+NAA0.5の培地にユチャの胚珠を置床し、全光照下にしたもので高率の発芽発根が見られ、1/2MS+NAA0.5の培地にヤブツバキの胚珠を置床し暗黒1週間後全光照にしたもので不定胚とカルスの形成が見られた。また、トウツバキ6品種の冬芽を試験管内で無菌的に成長させ、新しいシュートを得る実験を昨年に引き続いて行なった。正常な葉の展開には一定の低温期間の必要なことが明らかになった。

[現地調査]

平成21年2~3月にかけて職員2名を雲南省に派遣し現地調査を行った。大理州、昆明市近郊、楚雄市など16の地域から80個体のトウツバキ古木等について11項目を現地で測定・記録し、花と葉の17形質は宿舎で測定・記録した。また、楚雄市中山阻村委会林と楚雄市紫渓山において、トウツバキ自生地林とその周辺について植生調査を実施し、30箇所からデータを得た。特に楚雄市中山阻村委会林では山頂部から谷部までライントランセクト法による連続的な植生調査を行ったところ、山頂部や尾根部はマツ林、谷部に向かうにつれカシ林、シイ林、マテバシイ林へと変化し、トウツバキはシイ林~マテバシイ林に出現することが明らかになった。日本の照葉樹林と比較すると、基本的に属レベルでは共通種が多く、琉球列島の山地植生の構成種では標徴種レベルで同一なものがみられた。

関連成果物(公表した論文、活動の写真等)

【学会・論文発表】

①山下寿之・志内利明・中田政司・王仲朗・王霜・魯元学・管開雲:中国雲南省のトウツバキCamellia reticulata自生地における植生.植生学会第13回大会(2008年10月、東京農工大)ポスター発表.
②山下寿之・志内利明・王仲朗・王霜・魯元学・管開雲:中国雲南省のトウツバキCamellia reticulata 自生地における植生.富山県中央植物園研究報告14:21-27.
③山下寿之・志内利明・王仲朗・王霜・魯元学・管開雲:中国雲南省に生育するトウツバキの記録-2008年現地調査から.富山県中央植物園研究報告14:47-56.

【特別展示】

第19回全国椿サミット南砺大会での特別展示「中国雲南省のトウツバキとその文化」(平成21年3月20日)

20_04_1.jpg