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花博自然環境助成事業

平成19年度助成事業 成果概要の報告

団体名(所在地) 財団法人花と緑の銀行〔富山県〕
代表者 理事長 石井 隆一
事業名 トウツバキ園芸品種の保全に関する日中共同研究
事業の実施場所 富山県中央植物園、および昆明植物園を拠点とする中国雲南省
事業の実施期間 平成19年4月~平成20年3月
事業の概要 富山県中央植物園において、組織培養技術によるトウツバキ増殖法の開発を試みた。また中国雲南省において、寺院等に植栽されたトウツバキ園芸品種の古木や自生地における野生種巨樹の現地調査を行った。
成果の要約

[組織培養実験]
トウツバキは挿し木による増殖が困難とされている。平成19年11月~1月に昆明植物研究所の魯元学氏を招聘し、中央植物園に栽培されている雲南省から導入されたユチャとトウツバキの葉芽を試験管内で無菌的に成長させ、新しいシュートを得る実験を行った。移植条件や培地、成長調整物質の組み合わせについて検討を行った結果、組織の褐変化を抑えて葉芽を伸長させることに成功した。この成果は新聞発表するとともに、雲南省大理市で開催された国際茶花育種学術交流会(2/19~21)で論文発表した。培養条件について、現在も継続実験中である。

[現地調査]
平成20年1~2月にかけて職員2名を雲南省に派遣し現地調査を行った。大理市およびその周辺域、昆明市近郊、西部の騰沖県の古寺、公園、旧家などには樹齢数百年といわれるトウツバキ園芸品種の古木が保護され、生き残っている。これらのデータベース作りを目的として調査用紙を作成し、園芸品種では世界一とされている巍山県巍宝山の‘桂叶銀紅’(樹高17.5m、幹周204cm、推定500年)をはじめ古木の生育環境、樹高、幹直径、花・葉色、花・葉の形態等について測定を行った。また、大理市永平県金光寺自然保護区の野生種のトウツバキ自生地では、世界最大とされる野生の巨樹(樹高17m、幹周140cm)を初めて科学的に調査し、野生個体群の構造についても調査した。これらの成果は国際茶花育種学術交流会で共同研究者によって口頭発表され、優秀論文賞の一つに選ばれた。なお、自生地調査の過程で花弁が八重になった野生集団が見つかり、その中の美しく花つきがよい個体を園芸品種として利用することを検討している。

関連成果物(公表した論文、活動の写真等)
【論文】
  1. 中田政司・王 仲朗・魯 元学・馮 寶鈞・王 霜・管 開雲・神戸敏成.2007.携帯型マンセル色票計による野外でのトウツバキの花色測定.園芸学研究 7:139-143.(助成前の成果)
  2. 中田政司・王 仲朗・魯 元学・王 霜・管 開雲.2008.中国雲南省楚雄市の常緑広葉樹二次林におけるトウツバキ個体群の観察.富山県中央植物園研究報告 13:35-40
  3. 魯 元学・神戸敏成・中田政司・王 仲朗・管 開雲.2008.雲南山茶花(トウツバキ)の園芸品種‘楚雄茶’と油茶(ユチャ)の微細繁殖に関する研究.中国第二回茶花育種学術研討会論文集.pp.31-43.
  4. 王 仲朗・王 霜・志内利明・山下寿之・中田政司.2008.大理州雲南山茶古樹及其野生資源官報.(Ancient camellia trees and wild camellia resources in Dali Prefecture of Yunnan Province)中国第二回茶花育種学術研討会論文集.pp.19-25(口頭発表で事業助成を明示)
【新聞記事】
  1. 平成20年1月22日 北日本新聞朝刊『トウツバキ増殖へ第一歩』
  2. 平成20年1月22日 富山新聞朝刊『トウツバキ増殖へ一歩』
  3. 平成20年1月23日 北陸中日新聞朝刊『葉芽育成に成功―希少種「トウツバキ」増やしたい』