2026年(第33回)受賞者

| 氏名 | ロビン・イアン・マクドナルド・ダンバー Dr. Robin Ian MacDonald Dunbar |
|---|---|
| 生年月日 | 1947 年 6 月 28 日(79 歳) |
| 国籍 | イギリス |
| 所属・役職 | オックスフォード大学心理学科名誉教授 |
授賞理由
ロビン ・イアン・マクドナルド・ダンバー博士は、人類学・進化心理学・霊長類学、認知科学を横断する学際的研究により人の社会と社会性を考察し、人類が進むべき道筋において、我々は何者かという根源的な課題への科学的アプローチをおこなった。その基盤となる業績が「社会脳仮説(Social Brain Hypothesis)」の体系化である。霊長類、とくにヒトの大きな大脳新皮質は、複雑な社会関係を維持するために進化したとされ、博士は霊長類の各種について大脳新皮質と旧皮質の比率を群れサイズと比較し、群れサイズが大きい種ほど大脳新皮質の比率が高いことを示した。この研究から、現代人の脳サイズを基に個人の親しい家族や友人の数には一定の上限があるという、いわゆる「ダンバー数」を提唱し、これは私たちの社会構造や社会行動への新たな視点を提供するものとして、学術界を越えて広く一般社会にも流布するところとなっている。
ダンバー博士はこの社会脳仮説を、1日の活動時間配分と結びつけて考察することで、ヒトの心理的・社会的特性の進化要因を解明した。すなわち、ある生物種が生存するために不可欠な、睡眠を含む休息、栄養獲得のための採食、社会維持のための社交という、三つの要素にそれぞれ費やす時間を1日の中でどのように割り振るかに注目し、当該の種の生活形態や生理学的特性、社会構造などとの関係を推測し、そのモデルを古人類に適用して、人類が新しいニッチに進出してきた過程を科学的に推測し復元した。これにより、体毛の減少による採食移動の効率化、笑いの獲得による社会維持の効率化、火を使った調理による採食の効率化などが人類の進化過程でクリティカルな役割を果たしたことを定量的に明らかにした。
古人類の採食生態の変化や体毛の減少などの諸特性には、生息地の気温、降水量、植生、食物の分布状態といった生態学的な諸要因が複雑に関係している。博士らの研究グループは、これらの生態学的諸要因の変化と人類社会の諸特性の変化との関係を定量的に解析する数理モデルを開発し、人類の進化過程を地球生態系の動態の中で科学的に解釈することに成功した。
さらに、博士は、大きな脳を獲得した人類が、言語の進化にも重要な貢献を行い、ヒト言語は大規模社会において社会的結束を維持するために進化したと論じた他、笑いや飲酒を伴う饗宴、宗教や祝祭なども、これに寄与し、重要であることを詳細な分析により明らかにした。
今や人類が環境や生態系へもたらしてきた影響は、「人新世」という概念が提唱されるほどに、深刻かつ不可逆的な段階に達している。このような状況において、未来における自然と人間との望ましい関係性を考察する上では、現在の人類が環境や生態系に与えている影響を捉えるばかりでなく、そもそも我々人類はいかにして生まれ、進化し、文化や文明を形成してきた存在であるのかという本質的な問いを改めて捉え直す必要がある。こうした存在論的視点を欠いたままでは、人と自然の関係を未来に向けて構想する際の基盤が脆弱なものとなり、その全体像を適切に展望することはできない。
人間は自然の一部でありながら、科学技術や経済活動を通じて自然環境を変えてしまう存在でもある。そのため、人間の行動や価値観の本質を知り、社会のあり方を見つめ直す博士の人類進化史研究は、今後、人新世概念との関係において学術的に堅固な足場を提供するものである。これは、生命体と地球との相互作用に関し、統合的視点からその変化と多様性の本質を解明するものとして、コスモス国際賞の授賞にふさわしいと評価した。
ダンバー博士はこの社会脳仮説を、1日の活動時間配分と結びつけて考察することで、ヒトの心理的・社会的特性の進化要因を解明した。すなわち、ある生物種が生存するために不可欠な、睡眠を含む休息、栄養獲得のための採食、社会維持のための社交という、三つの要素にそれぞれ費やす時間を1日の中でどのように割り振るかに注目し、当該の種の生活形態や生理学的特性、社会構造などとの関係を推測し、そのモデルを古人類に適用して、人類が新しいニッチに進出してきた過程を科学的に推測し復元した。これにより、体毛の減少による採食移動の効率化、笑いの獲得による社会維持の効率化、火を使った調理による採食の効率化などが人類の進化過程でクリティカルな役割を果たしたことを定量的に明らかにした。
古人類の採食生態の変化や体毛の減少などの諸特性には、生息地の気温、降水量、植生、食物の分布状態といった生態学的な諸要因が複雑に関係している。博士らの研究グループは、これらの生態学的諸要因の変化と人類社会の諸特性の変化との関係を定量的に解析する数理モデルを開発し、人類の進化過程を地球生態系の動態の中で科学的に解釈することに成功した。
さらに、博士は、大きな脳を獲得した人類が、言語の進化にも重要な貢献を行い、ヒト言語は大規模社会において社会的結束を維持するために進化したと論じた他、笑いや飲酒を伴う饗宴、宗教や祝祭なども、これに寄与し、重要であることを詳細な分析により明らかにした。
今や人類が環境や生態系へもたらしてきた影響は、「人新世」という概念が提唱されるほどに、深刻かつ不可逆的な段階に達している。このような状況において、未来における自然と人間との望ましい関係性を考察する上では、現在の人類が環境や生態系に与えている影響を捉えるばかりでなく、そもそも我々人類はいかにして生まれ、進化し、文化や文明を形成してきた存在であるのかという本質的な問いを改めて捉え直す必要がある。こうした存在論的視点を欠いたままでは、人と自然の関係を未来に向けて構想する際の基盤が脆弱なものとなり、その全体像を適切に展望することはできない。
人間は自然の一部でありながら、科学技術や経済活動を通じて自然環境を変えてしまう存在でもある。そのため、人間の行動や価値観の本質を知り、社会のあり方を見つめ直す博士の人類進化史研究は、今後、人新世概念との関係において学術的に堅固な足場を提供するものである。これは、生命体と地球との相互作用に関し、統合的視点からその変化と多様性の本質を解明するものとして、コスモス国際賞の授賞にふさわしいと評価した。
学歴
| 1969年 | オックスフォード大学 学士(心理学・哲学) |
| 1973年 | ブリストル大学 博士(心理学) |
| 2007年 | オックスフォード大学 修士(文学) |
職歴
| 1974‐1977年 | ブリストル大学心理学科博士研究員 |
| 1977‐1982年 | 英国科学技術研究会議(SERC)上級研究フェロー |
| 1979年 | 日本学術振興会(JSPS)外国人特別研究員(京都大学霊長類研究所) |
| 1983年 | ストックホルム大学動物学研究所 助教授 |
| 1983‐1985年 | ケンブリッジ大学動物行動学研究部門 研究員 |
| 1985‐1987年 | リヴァプール大学動物学科 研究フェロー |
| 1987‐1992年 | ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン人類学科 講師・リーダー |
| 1992‐1994年 | ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン人類学科 教授 |
| 1994‐1997年 | リヴァプール大学心理学科 教授 |
| 1997‐2003年 | リヴァプール大学生物科学部進化生物学 教授 |
| 2003‐2007年 | リヴァプール大学英国学士院 研究教授 |
| 2007‐2012年 | オックスフォード大学進化人類学 教授 |
| 2012‐2017年 | オックスフォード大学進化心理学 教授 |
| 2014‐2017年 | フィンランド・アールト大学コンピュータサイエンス学科 客員教授 |
| 2017年‐現在 | オックスフォード大学心理学科 名誉教授 |
主な受賞等
| 1988年 | 英国王立人類学研究所フェロー |
| 1994年 | 英国霊長類学会オスマン・ヒル・メダル受賞 |
| 1994年 | エディンバラ大学モンロー講演 |
| 1998年 | ウプサラ大学ファン・ホフステン記念講演 |
| 1998年 | 英国学士院フェロー |
| 2000年 | バース大学ミレニアム講演 |
| 2005年 | ガルトン協会 ガルトン講演 |
| 2007年 | 英国学士院・英国心理学会年次心理学講演 |
| 2009年 | ケント大学 スターリング講演 |
| 2009年 | エディンバラ大学モンロー講演 |
| 2012年 | アサルト大学名誉理学博士授与 |
| 2015年 | 王立人類学協会ハクスリー賞 |
| 2019年 | マインツ博物館ヒューマン・ルーツ賞 |
| 2021年 | フィンランド科学・文学アカデミー 外国人フェロー |
| 2021年 | 米国心理科学協会カブリ講演 |
| 2022年 | ハンガリー科学アカデミー名誉フェローに選出 |
主な著書等
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The Trouble With Science. Faber & Faber and Harvard University Press, 1995
〔『科学がきらわれる理由』松浦俊輔訳、青土社、1997年〕 -
Grooming, Gossip and the Evolution of Language. Faber & Faber, 1996
〔『ことばの起源 猿の毛づくろい、人のゴシップ』松浦俊輔・服部清美訳、青土社、1998年・2014年・2016年〕 -
How Many Friends Does One Person Need?: Dunbar's Number and Other Evolutionary Quirks. Faber & Faber, 2010
〔『友達の数は何人? ダンバー数とつながりの心理学』藤井留美訳、インターシフト、2011年;青土社、2025年〕 -
The Science of Love and Betrayal. Faber & Faber and Harvard University Press, 2012
〔『ヒトはなぜ恋に落ちるのか 愛と裏切りの進化心理学』吉嶺英美訳、青土社、2025年〕 -
Human Evolution. Pelican Press and Oxford University Press, 2014
〔『人類進化の謎を解き明かす』鍛原多惠子訳、インターシフト、2016年;『人類進化 私たちはいかにしてヒトになったか』鍛原多惠子訳、河出書房新社、2025年〕 -
Friends: Understanding the Power of our Most Important Relationships. Little Brown, 2011
〔『なぜ私たちは友だちをつくるのか 進化心理学から考える人類にとって一番重要な関係』吉嶺英美訳、青土社、2021年〕 -
How Religion Evolved and Why It Endures. Pelican Press and Oxford University Press, 2022
〔『宗教の起源 私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』小田哲訳、白揚社、2023年〕
