COSMOS PRIZE コスモス国際賞

2013年(第21回)受賞者



氏  名 ロバート・トリート・ペイン
Robert Treat Paine
生年月日 1933年4月13日
国  籍 米国
所属・役職 ワシントン大学名誉教授
http://www.washington.edu/
ロバート・トリート・ペイン

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授賞理由

 
この地球上にはさまざまな生きものが共存しているが、アメリカの海洋生物生態学者ロバート・トリート・ペイン博士は、生物群集の安定的な維持に捕食者の存在が不可欠なことを、明快な野外実験によって示し、生態学はもとより保全生物学や、一般の人々の生物多様性への理解に大きな影響を与えた。
ペイン博士はワシントン大学の助手時代に、海岸に生息するカサガイなど複数種より成る生物群集から、食物連鎖の最上位に位置する頂点捕食者(top predator)であるヒトデを除去すると、群集全体が崩壊して二枚貝のイガイ1種だけが優占する事実を見つけた。これは、少数のわずか1種といえども群集の安定には欠かせない場合のあること、他の種にネガティブな効果をもたらす捕食者が群集全体の維持に不可欠なことを、世界ではじめて実験的に証明した。ペイン博士は、この研究を1966年にアメリカン・ナチュラリスト誌に発表し、1969年には同誌で、群集の維持に不可欠なヒトデのような種に対してキーストーン種という概念を提唱した。こうした一連の研究は、生物多様性を扱う群集生態学の分野に新しい視点をもたらし、生態学の教科書はもとより、わが国の高校の教科書にも広く引用されている。
ペイン博士のヒトデの研究は50年近くも前のものだが、その意義は現在も重視されている。1995年にエステスとダギンズによって報告されたアラスカやアリューシャン列島で行われた「ケルプ(大型海藻)の森」の調査では、頂点捕食者であるラッコがそこの多様性の維持に重要な役割を果たしていることが証明されており、1999年にターボーとスーレによって纏められた北米の哺乳類の保全に関する報告書では、「頂点捕食者がいなければ、急速かつ広範な絶滅が進み、生態系は単調なものになるだろう」と締めくくられている。また最近出版された「捕食者なき世界」(ウィリアム・ソウルゼンバーグ著:文芸春秋、2010)では、生物多様性における捕食者の重要性が説かれている。
この地球上を豊かにしているのは、さまざま生きものの織り成す相互依存、相互作用の関係である。それは必ずしも協力とか協調だけで成り立っているわけではなく、そこには食う・食われるや競争関係も内在している。このことをペイン博士は実に明快な手法でもって明らかにし、今日の生物多様性を考える上での重要な指針を与えた。これは、地球上の多様な生きもののあり方を探り、「自然と人間との共生」をめざすコスモス国際賞を授賞するにふさわしいと評価した。

学  歴

 
1954年 ハーバード大学学士
1961年 ミシガン大学 博士号

職  歴

 
1962-1967年 ワシントン大学動物学助手
1967-1971年 ワシントン大学動物学助教授
1971-1998年 ワシントン大学動物学教授
1991-1998年 ワシントン大学動物学科長
1998年- ワシントン大学動物学名誉教授

主な賞歴

 
1983年 米国生態学会 MacArthur Award
1989年 ドイツ生態学機構 Excellence in Ecology Prize
1996年 米国ナチュラリスト学会 Sewall Wright Award
2000年 米国生態学会 Eminent Ecological Award

主な著作

 
Marine Rocky Shores and Community Ecology:
an Experimentalist's Perspective.
Ecology Institute (Germany).  152 pp. (1994).
A. W. Rosenfeld with R.T. Paine. The Intertidal Wilderness. University of California Press. (2002).

主な論文

 
Food web complexity and species diversity.   American Naturalist 100:65-75. (1966).
A note on trophic complexity and community stability. American Naturalist  103:91-93. (1969).
Paine, R.T. and R.L. Vadas. The effects of grazing by sea urchins, Strongylocentrotus spp., on benthic algal populations.  Limnology and Oceanography 14: 710-719. (1969).
S.A. Levin and R.T. Paine. Disturbance, patch formation and community structure.    Proceeding of the National Academy of Science USA 71:2744-2747. (1974).
Food Webs: linkage, interaction strength and community infrastructure.  Journal of Animal Ecology 49: 667-685. (1980).
R.T. Paine and S.A. Levin. Intertidal landscapes: disturbance and the dynamics of the pattern.  Ecological Monographs  51:145-178. (1981).
A conversation on refining the concept of keystone species. Conservation  Biology9: 962-964. (1995).
Mary E. Power, David Tilman, James A. Estes, Bruce A. Menge, William J. Bond, L. Scott Mills, Gretchen Daily, Juan Carlos Castilla, Jane Lubchenco, and R.T. Paine. Challenges in the quest for keystones. BioScience 46:609-620. (1996).


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