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ガラパゴス:進化の実験場 |
| フェルナンド・エスピノザ所長 |
| 1835年、チャールズ・ダーウィンはガラパゴス諸島で5週間を過ごし、「ガラパゴス諸島の自然史は非常に好奇心をそそり注目に値するものである。ゆえに、時間と空間の両面で、私たちは少しばかり、地球初の生物の出現という偉大な事実―謎の中の謎―に近づいたような気がする」と記述しました。この短い期間の観察は、自然淘汰による進化論を展開させる発端となりました。
ガラパゴス諸島とその海洋保護区は、ユネスコの加盟国によって世界遺産に指定されました。この指定により、ガラパゴス諸島が世界で最も重要な自然地区の一つであるということが認められ、ガラパゴスを唯一無二の人類の自然遺産として保護する必要性に焦点が当てられました。 ガラパゴス諸島は1535年、当時のパナマ司教、フレイ・トマス・デ・ベルランガの乗った船が海流で流され、ガラパゴス諸島に漂着した時に正式に発見されました。彼がスペイン王カルロス5世に宛てた報告書には、ゾウガメとイグアナについての最初の記述が含まれていました。また、鳥類が少しも人を警戒していないことについても触れていました。 ガラパゴス群島は、13の大きな島とより小さな六つの島、そして40を越える小島で構成され、それぞれに正式な名称がついています。ガラパゴス周辺の東太平洋の海の水をなくしていったとしたら、水面下にある海底のドラマチックな地形が姿を現すでしょう。その山や山脈、台地、そして谷の様子から、この群島の起源と発達について多くのことがわかります。最初のガラパゴスの島(現在の東端にあたる)は、数百万年前(恐らく1千万年前に)に形成されました。海底で火山の噴火が始まり、山々は連続して起こる噴火と共に成長しつづけ、その山の裾野がガラパゴスの基盤を形成していきました。 島と島の生活は生物学者を魅了しています。進化的・生態学的過程の結果を非常に明白に映し出しているため、ガラパゴス諸島は多くの研究の対象となっています。生態学的な関係と進化の歴史は、どのように私たちの自然界が機能しているかを理解する上での骨子となります。 生物の移住と馴化のプロセスの本質も、ガラパゴスの生物相を形づくる上で重要な役割を果たしています。約5百万から1千万年前に初めてガラパゴスの火山の頂上部が海面上に現れたとき、そこにはまだ生命は存在していませんでした。ですから、ガラパゴス特有のあらゆる動植物の種は、世界の他の地域からもたらされたもののはずです。生物の移住に関する経緯を直接的に伝えるものは残っていないので、なぜそれが起こったのかは不明ですが、状況的な証拠をもとに、その理由について論理的に推論することができます。 ガラパゴスのような海洋火山島は、一度も他の大陸とつながったことがないという点で大陸島とは異なります。この大洋島は不毛の状態から始まり、長距離の移動によって生物相が形成されたとしか考えられません。ガラパゴス諸島では爬虫類が優勢ですが、両生類は存在していません。また、鳥類は多いですが哺乳類はほとんど生息していません。植物界では、ヤシや針葉樹、そして通常大きな花や重い種子を持った植物のグループはみられませんが、シダ類、イネ科、キク科(ヒマワリやタンポポ科)のグループは予想以上に豊富に存在しています。 アシカ、オットセイ、ウミガメ、ペンギンはよく泳げるので、きっと海流をうまく利用してこの島に泳ぎ着いたのでしょう。ゾウガメは長い間海を浮遊することが知られていますが、おそらく同じように海流に乗って運ばれてきたものと考えられます。 多くの下等植物、例えばバクテリア、カビ、シダ、コケ、地衣類などの、小さくて軽い胞子は、簡単に風を介して分散します。小昆虫やクモ、そして小さなカタツムリなどもしばしば風の吹くままに運ばれてきます。移動種を除く陸上の鳥やコウモリは、概して飛ぶ力が弱く、強い風によってガラパゴス諸島へと流されてきたと考えられます。 ガラパゴス諸島はよく「進化の実験場」と呼ばれてきました。このように限られた地域において、これほど多くの進化的変化を示している動植物をかくも多様に発見できる場所は世界でもほとんどありません。種の個体群は固定的なものではありません。新しい世代の出現ごとに絶え間なく変化しており、場所だけでなく時間の上でも変動を続けています。種の個体群には変化を繰り返してきた歴史があります。そのような変化は主に、親から子へと受け継がれる遺伝子が改変されることによって起こります。ある特質が獲得され、個体群の特徴となっていき、種の性質がある時にその元の種とは著しく異なったものとなることがあります。ある時点に―たいていはそれをいつとは特定することはできないのですが―新しい種が出現するのです。この「変化を伴なう由来」は生物進化の基礎となっています。 ダーウィン・フィンチ類の格別めだたない外見は、進化論の歴史におけるその重要性と矛盾するものですが、ガラパゴスには13種類のダーウィン・フィンチが生息しています。 これらの鳥のくちばしの構造と食性は、種によって様々です。それぞれの種がおのおの異なる方法で食べ物を食べます。フィンチの中には、種子を食べるもの、昆虫を食べるもの、カメにつくダニを食べるもの、花を食べるもの、海鳥の血を吸うものもあります。また、そのうち2つの種は、小枝やサボテンのとげを使って枯れた木の枝の穴から昆虫の幼虫を取り出して食べます。南米大陸でみられる7つの科に属する鳥類が生態系の中で受け持っている役割を、ガラパゴスでは13種のダーウィン・フィンチが果たしているのです。オオガラパゴスフィンチからムシクイフィンチにおよぶくちばしの形状のバリエーションは、この鳥の共通の祖先からの比較的新しい進化を考えると驚異的なものです。 |
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環境保全とチャールズ・ダーウィン研究所の陸生生物の研究 |
| アラン・タイ博士 |
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ガラパゴスは、よく知られている進化的適応や珍しい動植物の発見を別にしても、生物多様性(固有種の豊富さと分布のパターン)が他の群島に比べて変化していないという点でも特別な存在である。これはガラパゴスの発見とそこへの居住が遅かったためである。損失は少なく、人類出現以前のパターンをまだ確認することができ、この島を人類が出現する以前の状態のように戻すこともまだ可能である。しかし、この魅力的な群島は3つの大きな要因によって脅威にさらされている。世界の多くの地域と同様、生息地が開発され劣化しているため、特に湿潤な高地などの在来種の生息環境が著しく損なわれ、そして多くの固有種が減少している。直接的な開発は、とりわけゾウガメやいくつかの樹木などに影響を与えている。しかし最も大きな脅威は外来種の導入である。 侵入種の影響には比較的わかりやすいものがある。例えばヤギは植物を食べ尽くして侵食を引き起こし、かつて森林に覆われていた地域を半ば砂漠のようにしてしまうし、イヌはリクイグアナを殺す。他の外来種の影響は、もっと遅くてわかりにくいが根本的なもので、それに対処することもより困難である。現在、ガラパゴスでは外来植物種の方が在来植物種よりも多くなり、外来種の多くは国立公園に侵入しているだけでなく耕作地でも大きな問題になっている。また、外来の害虫や病原体が繁殖して影響を受けやすい在来の動植物を散々に荒らしている。最も影響の大きい40種の外来植物は広い地域に入り込み、植生を完全に変化させた。例えば、もともと樹木が生育していなかった高地に外来の高木が侵入したために、在来種は日光を受けることができなくなってしまった。 チャールズ・ダーウィン研究所(CDRS)における私たちの研究はこれらの問題の解決策を見出すことを目指している。CDRSはその解決策を実行し公園を運営する国立公園局と協力して働いている。私たちの陸生生物の研究には二つの主な焦点がある。それは絶滅の危機に瀕している在来種や群落の研究、そして最も悪い侵入種についての研究である。我々の絶滅危惧種に関する研究内容には、それらの種の状態や分布を判断する基準となる情報の確定、個体数の変化の観察、減少の理由および減少を引き起こしている要因の理解などが含まれる。私たちはまた国立公園局と協力して効果的な保護活動の策定を行っている。侵入種に関する研究では、その分布と拡大を監視し、効果的な管理計画(増殖率と拡散能力など)を立てるために把握しておかねばならない要因を特定し、効果的な管理技術を開発することを目標としている。また、再生にも取り組んでいる。ガラパゴスはすでにダメージを受けているが、私たちは絶滅危惧種と生息地の劣化に対処するために、個体数の増加や群落の再生をどのように促進するかについての研究を行っている。最後に、自然環境の保全は世論にかかっているので、私たちは地域社会と共に保全に関する問題についての理解を深めるための取り組みを行っており、また地域および国家の計画機関と協力して保全の理念を法律に盛り込むための努力をしている。ガラパゴスは課題を抱えているが、政治的な意志と人々の意志を持ってすれば、ガラパゴス固有の動植物の将来を保証できるのである。 |
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環ラパゴス諸島の海洋保護区 |
| ギュンター・レック博士 |
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世界で最も大きな海洋保護地域の一つであるガラパゴス海洋保護区は、いくつかの点で独特である。東太平洋の熱帯海域の南端、エクアドル本土の西600海里の赤道上に位置しているにもかかわらず、暖流と寒流そして暖水塊と冷水塊が組み合わさって、比較的小さな海域に、岩の多い独特の海洋生息地をつくっている。この生息地には、西太平洋を含む熱帯の原産種と南極の海洋動植物が同時に存在し、また驚くほど高い割合で固有種が生息している。このため、ガラパゴス諸島は3つの異なる環境保全上重要な地域を含み、その研究は海洋生態地理学の一分野を形成している。 クロムウェル海流からの冷水の湧昇により、高い海洋生産性がもたらされており、小さな遠洋種の魚群、外部から入ってくる多くの移動性動物種、そして海鳥、ウミイグアナ、アシカの多くのコロニーと、そして主に溶岩から成る岩礁の周辺に生息している多くの生物をささえている。数年おきに起こるエル・ニーニョ現象(最近では1997年と1998年に発生)のため、西方から暖流が流れ込んで海流の速度が遅くなって湧昇が弱まり、海洋生物に深刻な影響を与え、海洋生物種の個体増加パターンの予測がつかなくなっている。これらの影響の非常に顕著な徴候の一つがサンゴの白化現象である。この白化現象は、サンゴの生息環境が限られているため、ガラパゴスでは特に深刻である。 またこの島には200年近くもの間、人間が居住しているが、その大半はエクアドル本土から来た人々である。以前より人の増減はあったが、第2次世界大戦後からは着実に人口が増え始めた。今では沿岸の岩底の海洋資源、例えばハタ類、イセエビ、ナマコ(数年前から)を利用する漁民の数は数百名になっている。遠洋魚を獲る人はそれよりももっと少ないが、遠洋魚はここ数年いくつかの国から来る漁船団の標的となっている。 ガラパゴス諸島周辺に海洋保護地域(MPA)を設置するための当初の取り組みは、海洋生物の多様性の保護のみならず、地元漁師の活動の選択肢を多様化して、最も固有性の高い地域である沿岸生息地への負荷を軽減し、乱獲されている種のいくつかを保護することを目指していた。 1986年に指定された海洋資源保護区は、エクアドル最初の正式な海洋保護区であった。しかし、それは主として上意下達方式の取り組みであり、地元の利害関係者の参加はほとんどなかった。この過ちから学んで、海洋地区の管理計画の策定に住民の参加を求める新しいプロセスが取られ、地元の利害関係者の参加というまったく新しい要素が導入された。この結果、ガラパゴス諸島の法律にガラパゴスの地域社会全体が関与し、最終的にガラパゴス地域社会の支持を受けて133,000km2におよぶ海洋保護区が法制化されることとなった。時には、企画に関してだけではなく、科学研究や意志決定の際にもグループ間で意見が対立することもあるが、たとえあらゆる開発や海洋資源に関する問題の解決には程遠い状況にある場合でも、紛争解決や協力的な意志決定のメカニズムによって対話を維持し、地元における暴力を抑制することができる。 地元の紛争は、主にイセエビやナマコの漁獲期間や漁獲割り当てに関して起こっている。ナマコ漁は伝統的に行われてきたものではないが収益性が高いため、地元では激しい乱獲が行われるようになったと考えられる。また、フカヒレの輸出を目的として不法にサメのひれを落とす行為は、重要なダイビング産業との直接的な対立を生んでおり、またこれは沿岸の生態系に影響を及ぼす可能性もある。 海洋保護区内で漁業を続けたいと考えているエクアドル本土のマグロ漁船団との深刻な紛争もまだ続いている。この保護区で不法に漁を行っている漁船を捕らえてみて判明したことだが、この保護区で漁をすると、MPAにとっては受け入れがたいことに、イルカ、サメ、カメ、鳥類その他の種のバイキャッチ(漁の目的以外の海洋生物を網にかけてしまうこと)がありうる。また、このエクアドル本土のマグロ漁船団と、合法的な利用権を主張する地元の漁師との直接的な対立も起こっている。 チャールズ・ダーウィン財団は、海洋地域の管理のあり方を改善するために重要な役割を果たしてきた。以前の上意下達型で非効率的な方法に変わって、今では下意上達型の研究と意志決定が行われるようになり、必ずしも満足のいくものとは限らないが驚くべき成功をおさめている。漁師と協力し、漁業の対象となっている種の状態に関する調査が行われている。また、モニタリングや報告書の検討や、専門的な論拠に基づいた難しい交渉も行われている。一般には、海洋資源の共同管理や保護に関して不満に思うこともしばしばあるものの、私たちは以前よりずっと近しくなっていると感じている。現在では、より多くの地元の住民が、保護と賢明な管理活動が、ガラパゴスで生活していくための持続可能な方法の基盤として必要であることを受け入れるようになった。漁業による環境への影響が、ガラパゴス諸島の海洋生態系の変動する環境収容能力を超えないようにするために、他の海洋資源の利用法として、ダイビングやスポーツ・フィッシングなども考えられている。 ガラパゴスは長年にわたって世界遺産に指定されているが、その中に新たに海洋保護区が含められたことは、その特有の自然的価値のみならず、保護区の管理改善に向けた努力や、チャールズ・ダーウィン財団が大きく貢献してきた海洋保護に対する地域社会の積極的な支持を求める努力が認められたことの表れである。 |