エステラ・レオポルド博士は、花粉学者であり自然保護論者として博士の父アルド・レオポルド氏(1887-1948)が提唱した「土地倫理」の思想を継承、追求すると共に、アメリカ各地においてこの考えを広げるなど、多大な功績を残した。
土地倫理で言う「土地」とは、単なる土壌ではなく、土壌、水、植物、動物を含めた共同体のことであり、人間を含む共同体の全体は、共同体の構成員として相互依存、相互作用の関係にある。つまり生態学的共同体である一員は、この関係を離れては存続せず、この関係を維持することにおいて自らの生命を継続することが可能になるという、まさに「自然と人間との共生」を意味するものである。
アルド・レオポルド氏が生前にまとめ、その死後に出版された『野生のうたが聞こえる (A Sand County Almanac)』(邦訳:講談社学術文庫)は、「土地倫理」の観点から有限の地球資源の重要性を示唆するもので、自然保護運動の先駆けであるとも言える。娘のレオポルド博士は、土地倫理を兄姉と共に引き継ぎ、自らの活動の信念として米国各地の自然保護活動に従事した。
なかでも、コロラド州のフロリサント化石層の保全に当たっては、花粉分析によって保護の必要性を裏付ける科学的根拠を提供するなど献身的な活動を行った。フロリサント化石層は、樹木、魚類、鳥類、昆虫など多くの生き物の化石を含んでおり、博士の活動により、開発を免れ、今では世界的に有名な国定公園となっている。
また、ワシントン州セントへレンズ山は、噴火によって付近600km2もの森林が焼失したが、その後、国定公園化に向けて動いたのは、博士の卓越した指導力によるものであり、同地域は生物がリセットされた後の生態系が研究できる数少ない実験の場となっている。さらに、グランドキャニオンにおけるダム建設に対する調査研究を行い、約20のNPOが一致して環境保全活動に取り組めるよう支援した。
これらの国定・国立公園化及び保全活動は、永遠に受け継がれるべき自然遺産を社会に残すという、人類社会に対する大きな貢献と言える。>
博士の活動は、兄姉と共に父の業績を称え、父の考えである「土地倫理」を継承した博士の卓見性と強い意思によるものである。人間がいかに土地と調和して生きるかを、数世代にわたり教示できるものは稀有である。さらに博士は、レオポルド家の取り組みを継続するため、1982年にレオポルド財団の設立に尽力した。現在でも理事兼科学調査委員長として、財団の運営に当たると共に、教育普及活動の範囲を広げ、人々の暮らしと社会の中に土地倫理を組込む活動を続けている。
エステラ・レオポルド博士が、環境問題を抱える先進国アメリカにおいて、土地倫理を展開し、自然環境保全全般にわたって、多くの提言を行い、かつ実践していることは、地球上の各地における自然環境保全、生物保全に対して普遍性をもつものであり、「自然と人間との共生」を目指すコスモス国際賞の授賞にふさわしいと評価した。
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