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呉征鎰博士は、北京・精華大学で植物学を学び、北京の中国科学院植物研究所と、昆明植物研究所を拠点に、1930年代から60年以上にわたり、一貫して、中国を中心とする東アジア地域の植物の種の多様性の調査研究に取り組んできた中国を代表する植物学者である。
呉博士の研究の最大の成果は、同博士が編集を主導している「中国植物志」に見られる。この書物は、地球上で植物の種が最も多様な地域のひとつである中国全土の植物の種多様性を網羅するもので、全80巻、125分冊におよぶ大スケールの研究文献である。すでに100冊余の刊行を終え、米国ミズーリ植物園長ピーター・レーブン博士との共同監修による英文版(全25巻)の出版も進んで、国際的にも高い評価を受けている。
狭い意味での専門はシソ科など特定群の植物分類学的研究であるが、長年の研究成果から種子植物一般に該博な知識と鋭い科学的好奇心をもち、常に内外の研究者と情報交流に努め、地球的な視点を加えながら研究を行ってきたところに呉博士のスケールの大きさがある。「中国植物志」の編集と並行して、中国の植生を総括した「中国植被」など大部の著述を出版したほか、最近では中国を起点とする植物地理学の共同研究を主宰し、中国の植物相の歴史的な形成についてもすぐれた研究成果を発表している。
呉博士は、長年にわたる植物の基礎研究の中で、常に植物と人間とのかかわりを考え、人間の行為による植物の種の絶滅や、植物の減少による環境の劣化、森林資源の持続可能な利用などについて、数多くの警告や提言を行ってきた。これらは中国における国立公園や自然保護地域の設定にも生かされている。
植物と人間とのかかわりが、社会的な問題としてほとんど認識されていなかった1950年代から、生物の多様性が人類の将来にとって極めて重要なテーマとなるとの先見的な考えを持ち、植物相や植生など生物多様性の豊かな中国で自然を詳細に解析し、その知見に基づいて、地球的視点で人間環境のあり方を考察し、開発途上国における生物多様性の保全に貢献してきた。
呉博士の業績は、まず多様な植物の実体を知り、そこから植物に対する人間のあり方を考え、「自然と人間との共生」の原点に関して、東アジアを拠点として国際社会に極めて大きな貢献をもたらしたものであり、コスモス国際賞の授賞にふさわしいと評価した。
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